子供の頃は、大人の言うことは絶対だと思っていた。
親に「なんでできないの?」と言われたり、先生に「違う」と言われたりすると、涙が出た。
大人の言うとおりに正しくできない自分が無価値に思えた。
自分の全部が間違っている気がして、ダメな自分にひどく絶望した。
そうでもないんだなと思えるようになったのは、結局自分が大人になってからだった。
大人だって大したことない。
絶対的存在ではないし、間違うことだってある。
そこまで脅威に感じる必要はなかったんだ。
自分の全部がダメということではなかったんだ。
大きくなるまで気付けなかった。
そもそも私がいつから大人になったのか、というのも曖昧。
そりゃあ、成人年齢は決まってるけど。その瞬間に大人へと進化するとか、劇的変化が起きるとかじゃなかったし。
どちらかというと、私はまだ子供だからなあ、と思ってる。
だめな考えかもしれない。甘えてるかも。
でも、仕方ない。
子供や学生を見ていると思う。
この子たちは年齢こそ若いけれど、ちゃんと1人の人間として意志を持って生きてるわけで。
年齢の差がそのまま全ての差になるわけじゃないよな、って。
私なんかよりずっと秀でたところがあって当然。
絵が上手いとか、電車に詳しいとか、人の目を見て話が聞けるとか、きちんと挨拶ができるとか。
そういうところを尊重していたい。
褒めてあげるとか、叱ってあげるとか、そういう上の立場としての行為じゃなくて。
対等な人として、すごいなって思いたい。尊重したい。
私は親では無いし、教職についているわけでもないから、なおさらそう思うのかもしれない。
導かなきゃ、教えなきゃ、って感覚が希薄だから。
自分のことも子供だと思ってるくらい、先導する立場だという気持ちが無いから。
この、成人した大人として甘々なところは褒められたものではないと自覚してるけど、
そのおかげで若い子に対してフラットな気持ちを抱けるとするなら、
人としてダメってことはないのかもしれないな、なんて。
だって彼らに伝えるなら、私みたいな存在が言う方が効果的だもの。
絶対的な大人なんていないんだよ、って。